レビュー
ドラマや小説になった「半沢直樹」のような銀行員でなくとも、「アホ」と戦いそうになる局面に多くの人が遭遇していることだろう。大企業や官僚など、大組織に所属している場合にはなおさらだ。人にはそれぞれのインセンティブがあり、出世や給与アップを目的に、自分だけが際立った成果を上げられるよう、周りのライバルの評価も含めて操作しようとする困った人はどこにでもいるものだ。
ではそのようなアホと対峙することになったらどう振る舞うべきなのだろうか。著者によれば、決して戦ってはならず、まるで合気道のように、相手の力を利用して上手くことを運ぶ方策を考えるべきである。そのためには、一時的な怒りに身を任せることなく、一呼吸置いて対処策を立案し、相手をリスペクトしながらじっくりと対処しなくてはならない。
さて、自分自身はこのような対応ができるのか。様々な視点からアドバイスをくれるような信頼できる人がいれば、冷静な対処が行いやすいのかもしれないが、一人だったとしたら、わかっていても難しいことに違いない。恐らく、著者の忍耐力は政治家として勤める中で相当に鍛え抜かれたのだろうと感心する。
内向き思考が支配的になりうる組織は、売上成長が止まった大企業、ビジネスモデルが盤石で将来の不安が小さい銀行のような組織、官庁や弁護士などの専門組織、と世の中に数多く存在している。こうした組織で運悪くアホと遭遇してしまった方は、本書を読んで冷静に対処策を練ってみてはいかがだろうか。