著者
ジョン・R・サール (John Rogers Searle)
1932年生まれ。アメリカの哲学者。ウィスコンシン大学に入学後、オクスフォード大学にて学士、修士、博士号を取得。帰国後、カリフォルニア大学バークレー校の助教授となり、のちに同校教授。言語哲学を出発点として、心の哲学に関心を広げ、生物学的自然主義の立場からさまざまな論争を繰り広げる。2000年、ジャン・ニコ賞を受賞。2004年、米国人文科学勲章を受章。おもな邦訳書に、『言語行為』『志向性』『意識の神秘』などがある。
【要点1】
心の哲学は現代哲学における主要な論点にもかかわらず、影響力のある理論はすべて誤っている。本書はこれまでの議論を整理、解説したうえで、何故それが誤りなのかを提示する。
【要点2】
現代では心と脳の機能を同一のものとする唯物論が主流になっている。だが唯物論は意識や志向性の存在という、常識的な感覚を忘れがちである。心の哲学の問題を解決するためには、伝統的な前提を捨て去らなければならない。
【要点3】
ヒューム以降、自己なるものは存在せず、あるのは瞬間ごとの「知覚の束」というのが、哲学における一般的な考えになった。だが自己は理性のもと、志向性を組織する能力も有している。
レビュー
現代哲学はフランスやドイツを中心とした「大陸系」と、アメリカとイギリスを中心とした「分析系」に二分されるが、本書の著者ジョン・R・サールは、後者を代表する大家である。
分析系の哲学は、記号や論理式を多用した数学のような記述で構成されることが多い。ゆえにとっつきにくく感じるかもしれない。またそのせいもあってか、日本ではハイデガー、フーコー、デリダといった大陸系の哲学者と比べると、一般的に馴染みが薄い分野となっている。
だが世界的に見ると、分析系の哲学の影響力は大きい。本書で取り上げられる「心の哲学」は、言語、論理の哲学と並び、分析系の哲学における最大のトピックのひとつだ。本書は心の哲学における議論を整理し、これまでの議論がいかに誤っているかを解き明かす。行動主義、機能主義、同一説、随伴現象主義やチューリングテスト、中国語の部屋、哲学的ゾンビといった、心の哲学における論点がくまなく解説されており、サールによるそれぞれの批評も平易だ。現代哲学の主要な論点を学ぶための格好の入門書と言えるだろう。
また入門のための解説だけに留まらず、サールの「生物学的自然主義」という心の哲学の立場について、わかりやすく解説されているのも興味深い。いまだ決着のつかない心の哲学の議論を、今後さらに深めていくための土台となる一冊だ。
ジョン・R・サール (John Rogers Searle)
1932年生まれ。アメリカの哲学者。ウィスコンシン大学に入学後、オクスフォード大学にて学士、修士、博士号を取得。帰国後、カリフォルニア大学バークレー校の助教授となり、のちに同校教授。言語哲学を出発点として、心の哲学に関心を広げ、生物学的自然主義の立場からさまざまな論争を繰り広げる。2000年、ジャン・ニコ賞を受賞。2004年、米国人文科学勲章を受章。おもな邦訳書に、『言語行為』『志向性』『意識の神秘』などがある。
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