著者
デニス・ブーキン
経済学者、経営者、心理学者。サンクトペテルブルク工科大学経済学部卒。ロシアのコンサルティング会社・Empatika社の共同経営者でありコンサルタント。
カミール・グーリーイェヴ
写真家。現代美術学校「インディペンデント・ワークショップ」(モスクワ市近代美術館主催)を修了。
【要点1】
記憶力を鍛えるにあたって必要なのは、物事に気づく注意力と、その情報をすでに知っている物事に関連付ける想像力である。
【要点2】
忘れることは重要である。忘れないと脳が情報であふれかえってしまうからだ。いったん忘れることで、新鮮な目で問題を捉えられるようになる。記憶はその後によみがえらせればよい。
【要点3】
未来記憶とは、何かをしようという意図や予定を覚えることである。過去の記憶とは違い、本人が主体的に思い出す必要があるため難易度が高い。単に意図しただけで、実際にはまだ起きていないことだからだ。
レビュー
「スパイ」と「記憶術」がどのように結びつくのか、訝しがる人もいるかもしれない。しかしスパイ活動において、記憶はその根幹を成すものである。
本書は実話にもとづいたフィクション作品であり、同時に「記憶力を強化する」という実用書としての側面を持つ。主人公はKGB(旧ソビエト連邦国家保安委員会)に所属する、とあるスパイだ。その任務を遂行する上で求められる「記憶」に焦点をあてながら、記憶力を高めるトレーニング方法が多数紹介される。スパイの任務で重要なのは、膨大な情報を残さず記憶して完全に再現すること。スパイは記録を残せず、メモもできない。また他人になりすますために、偽りの人生を正確に矛盾なく話せる能力や、複数の立場を使い分けることも求められる。記憶力に長けていないスパイは、命を失いかねない。
本書で書かれている記憶術はどれも、ロシアの一流の諜報部員の養成に使われているものだという。正しい段階を踏みながらレベルを上げていけば、あなたの記憶力は着実に強化されるだろう。読んでいて実感したのは、イメージする能力と、既存の知識と新しい知識を繋げる手法の大切さである。とりわけ数字のイメージ化とストーリー化の具体例は参考になった。
主人公がスパイとして成長するストーリーを楽しみつつ、本書に書かれている記憶術の訓練にもぜひチャレンジいただきたい。脳のリミッターを解除し、最大限に記憶力を高めるための一冊だ。
デニス・ブーキン
経済学者、経営者、心理学者。サンクトペテルブルク工科大学経済学部卒。ロシアのコンサルティング会社・Empatika社の共同経営者でありコンサルタント。
カミール・グーリーイェヴ
写真家。現代美術学校「インディペンデント・ワークショップ」(モスクワ市近代美術館主催)を修了。
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