著者
シェリー・ケーガン (Shelly Kegan)
イェール大学教授。道徳哲学、規範倫理学の専門家として知られ、着任以来二十数年間開講されている「死」をテーマにしたイェール大学での講義は、常に指折りの人気コースとなっている。本書は、その講義をまとめたものであり、すでに中国、台湾、韓国など世界各国で翻訳出版され、40万部を超えるベストセラーとなっている。
【要点1】
人間はたしかに“驚くべき物体”だが、有形物という意味では機械と変わらない。肉体が死ねば、その人は消滅する。
【要点2】
死が悪いとされるもっとも大きな理由は、今後良いことの起きる可能性が「剥奪」されてしまうからだ。
【要点3】
不死は良いものではない。私たちが本当に求めているのは、自分が満足するまで生きることである。
【要点4】
妥当な理由があり、必要な情報も揃っていて、自分の意思で行動しているのならば、自殺という選択肢が正当になることもある。
レビュー
「メメント・モリ(死を思え)」という言葉がある。
歴史的にみると、キリスト教以前においては「どうせ明日死ぬかもしれないのだから、いまを楽しむべきだ」という意味だったのが、キリスト教以後では「現世ではなく来世にこそ思いを馳せよ」というニュアンスに変化したらしい。いずれにせよここから言えるのは、意思決定するうえで「死」が大きな役割を持っているということ、そしてわざわざ口に出して自戒しなければ、「死」という運命はしばしば忘れられてしまうということだ。
ただでさえ長寿化が進行し、自らの「寿命」が遠のいていっている時代である。このまま医療分野が発展していけば、日常で「死」を意識する機会はますます減っていくだろう。そうしたなかで「死の本質」を哲学的に語った本書が人気を博していることは注目に値する。宗教的な教えに頼らず、あくまで論理的思考を用いて「死」を捉えていこうとするとき、そこに何が立ち現れてくるのか。
本書は学部生向けの講義をまとめた入門書なので、読むうえで哲学に関する背景知識は大きく問われない。とはいえれっきとした哲学書なのは間違いなく、気軽な気持ちで読めるものでもないだろう。最初から最後まで読み通すのもいいが、「日本の読者のみなさまへ」まで読み終えたら、気になるトピックから読み始めるのもひとつの手だ。
「死」について考えるということは、「生」について考えるということでもある。「死」と向き合うことが、「生」をより充実させることを願ってやまない。
シェリー・ケーガン (Shelly Kegan)
イェール大学教授。道徳哲学、規範倫理学の専門家として知られ、着任以来二十数年間開講されている「死」をテーマにしたイェール大学での講義は、常に指折りの人気コースとなっている。本書は、その講義をまとめたものであり、すでに中国、台湾、韓国など世界各国で翻訳出版され、40万部を超えるベストセラーとなっている。
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