レビュー
圧倒的に生産性の高い働き方とは、どのようなものだろうか。2001年東洋経済新報社より照屋華子氏、岡田恵子氏の『ロジカルシンキング――論理的な思考と構成のスキル』が出版されてから、既に十数年が経過しようとしている。その後、「論理的思考力」に係る書籍が多くの著者から絶え間なく出版され、書店に並んできた。その結果として、「MECE(モレなくダブりない)」という概念や、多種多様なビジネスのフレームワークは、今ではプロフェッショナルファームのみの特殊な武器ではなく、多くのビジネスパーソンの中でコモディティ化した。そんななかでも、2010年に出版された本書『イシューからはじめよ』には新しさがある。それは、これまでの著書ではあまり着目されてこなかった「それは本当に解くべき課題なのか」という論点に対して、明確な解を示していることに理由がある。世の中で問題かもしれないと思われているもののなかで、今この瞬間に解を出すべき問題というのは100個のうち2、3個だと著者は語る。解くべき問題を見極め(イシュー度を高める)、そして解の質を上げていく(仮説ドリブン→アウトプットドリブン→メッセージドリブン)。著者が脳神経科学の研究とマッキンゼーにおけるビジネスの経験から共通して見出したこのアプローチは、まさしく「知的生産のシンプルな本質」に違いない。