人は自分の重要性を感じた時や、上司や取引先から自分が大切な人物として扱われている、存在を認められていると感じる時に動き、行動し、その人のために頑張りたくなるものです。では、どのように言葉を言語化すると、人から大事にされている気持ちになるのでしょうか。ここでは取引先と関係を構築するための考えや、メッセージを伝える手法(Iメッセージ・YOUメッセージ・WEメッセージ)、メッセージの具体例についてご紹介します。

メッセージの主語で伝わり方が変わる

コーチングには「アクノレッジメント」というスキルがあります。これは「承認する」「認める」「感謝する」といった意味があり、相手の変化に気づき、言葉で分かりやすく伝えるという方法です。ただ単に褒めれば良いというわけではなく、あなたのことを「大切にしている」、「メンバーとして認めている」という意味合いを言葉で伝えることが大切だと言われています。また結果だけではなく、その過程や成長度合いを承認することによって自ら考え、行動し、成長を促していくと言われています。この考えや感情を伝えるメッセージは3種類あり、メッセージの主語(YOU・I・WE)が何になるかによって効果が変わってきます。

「YOUメッセージ」は、主語が「あなた」になります。「すごい」や「すばらしい」がYOUメッセージの代表的な例ですが、これらの褒め言葉には持続性(効果が長続きすること)はなく、人によっては即効性がありますが、関係性が希薄な場合嘘くさく感じる人も中にはいるかもしれません。

「Iメッセージ」は主語が「私」で始まり、相手が自分に対してどんな影響を与えているかを表現します。「うれしい」「あなたの話が聞きたい」「一緒に仕事がしたい」「また会いたい」「もっと知りたい」「誇りに思う」などがIメッセージです。IメッセージはYOUメッセージに比べて強いメッセージ性があり、受け入れやすいメッセージと言われています。代表的な例として、小泉首相(当時)が怪我をしながら優勝した横綱に対して「痛みに耐えてよく頑張った。(私は)感動した」とIメッセージで伝えました。

「WEメッセージ」は、相手と自分が一つのグループとして考えるので、一体感が生まれやすい表現です。たとえば上司から「〇〇さんがうちの課に配属されたおかげで、(私たちは)刺激をたくさんもらっているよ。ありがとう。」と言われると、影響力があります。このようにグループのリーダーが使うことで強いメッセージ性を持ち、信頼感が高まります。

「Iメッセージ」を伝えることで印象が変わる

メッセージの手法を踏まえて取引先とメールでやり取りを行う際、どちらがより良い印象を持てるでしょうか。

(A)「御社の商品に関していくつか質問がございます。例えば〇〇と△△を組み合わせるとどのようになりますでしょうか。詳しく内容を確認したいので、連絡お待ちしております。」

(B)「御社の商品に関していくつか質問がございます。例えば〇〇と△△を組み合わせるとどのようになりますでしょうか。詳しく教えていただけるとうれしい(ありがたい)です。」

(A)はメールの内容はストレートですが、「用件だけ知ることができれば問題ない」という心がこもっていない印象を与えます。

反対に(B)「は、「(私は)うれしい・ありがたい」という気持ちが入っているので、相手はあなたが欲しい質問の答えを叶えたくなる心情に変わります。

「Iメッセージ」は、自分が相手を評価するのではなく、自分への影響を相手に伝えるメッセージなので、受け入れることに抵抗感がありません。これは、取引先はもちろん、部下、同僚、家庭でも有効な手法です。「(私は)見習わないといけないと思った」「作ってくれたこの資料、本当に分かりやすくて(私は)本当に助かった」「(私は)あなたが成長してくれて本当にうれしい」「(私は)元気づけられています」など自分が思っていることや感じていることを表現しているので、具体性が増します。具体性が増すことで言葉が持続性を保ち、相手の心に浸透し、信頼を得ることや仕事へのモチベーションアップにつながるのです。

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