日本でビジネスとしてコーチングが注目され始めたのは2000年頃といわれ、主に部下の指導や人材育成のために使われるようになりました。2002年頃から医療・看護の分野で必要とされるようになり、今では教育現場や様々な分野で取り入れられています。ビジネスの分野では、会社や組織の中で部下の指導やマネジメントに活かしたいという理由でコーチングを学ぶ人が多くいます。ビジネスで活かせるコーチングにはどのような手法があるのか、コーチングの基本とすぐに活用できるコーチングスキルや具体例についてご紹介します。
コーチングとは?
コーチングとは、相手が持つ夢やビジョン、日常的に抱えている悩みや問題を、より良いアプローチで達成・解決させるスキルのことを言います。コーチは相手に気づきを与え、行動を促す「コーチング」というアプローチで、相手の持つビジョンや目標を達成させるパートナーです。つまり、「人を発展、成長させる」役目を持っています。
そもそもコーチという言葉は「馬車」が語源で、「大切な人をその人が望んでいるところまで送り届ける」という意味があります。それから年月を経て、現在ではマネジメントや教育、特にスポーツの分野などで「コーチ」と呼ばれるようになりました。
たとえばマラソン界で有名な小出監督は、シドニーオリンピック前の高橋尚子選手に対して、こんな問いかけをしたそうです。「これからQちゃんがする練習に3つのトレーニングコースを用意したよ。一つ目は金メダルを取るためのトレーニング、二つ目は銀メダルを取るためのトレーニング、三つ目は銅メダルを取るためのトレーニング。さあ、どれをやりたい?」
もちろん、高橋選手は「金メダルを取るためのトレーニングをする」という答えを選びました。高橋選手が自ら答えを出したことで、金メダルを取る可能性が高くなったように感じます。もし、小出監督が「金メダルを取るために、このメニューをやれ、次はこのトレーニングだ」と指導があったら結果は違ったものになったかもしれません。ここでのポイントはコーチではなく、クライアントが答えを出すということです。クライアントが答えを出すことによって、気づきが生まれ、心に刻まれるからです。
このようにコーチングは、「答えや能力はその人自身に備わっていて、それらを最大限引き出す」ことが重要になってきます。

コーチングの基本構造
それではコーチングの基本構造を簡単に説明します。ビジネスにおけるコーチングは、「クライアントの目標達成をサポートする」ことが一番の目的となります。そのため、
(1)目標となるゴールは何か
(2)その目標に対して「現状」はどのようになっているか
(3)目標と現状の差(間)にはどのくらいのギャップがあるのか
(4)そのギャップを埋めるために必要なことは何か、どんな行動を起こしたら目標に近づけるのか
という4つの項目に着目しながら会話を進めていきます。
目標となるゴールは、具体的で肯定表現であることが重要です。具体的であればあるほど、達成した時のイメージがつきやすいので良いと言われています。たとえば肯定表現の目標を決める時、「今月500万の売り上げを達成する」、「8月までに〇〇ができるようになる」、といったようなチャレンジすれば達成可能な目標を設定することをおすすめします。達成できると誰も信じていないような目標は、意欲も湧いてきませんし、成果も生まれないでしょう。反対に努力しなくても達成できるような目標を設定してしまうと、チャレンジ精神が生まれません。このように良い目標とは、「少しリスクがあり、チャレンジしないと目標に届かない」レベルの目標です。また肯定表現ではなく「〇〇したくない、〇〇のようにはなりたくない」と言った否定表現で目標を定めてしまうと、そのマイナスイメージを追ってしまう可能性があります。目標は肯定表現で設定して取り組んでみましょう。
