親子の自然体験教室などを手がける栗田朋恵さんに、年齢や子どもの成長に応じた自然の楽しみ方と注意点を教えてもらいました。

0歳:近場の自然に連れ出し風や光に触れてみる

おくるみに包まれている赤ちゃん

腰がすわってきたころから、自然のなかへ連れ出すことができるように。まずは公園や近場のキャンプ場などに出かけてみてください。「手のひらで草に触れたり、風に吹かれたりすることで、自然に触れる感覚を開いてあげるといいですね。ただ、まだ皮膚が薄く、体温調節もうまくできない時期なので充分なケアも必要です」

1歳:自分で動けるようになると自然への好奇心も強くなる

はいはいをして自然のなかにあるものを触っている子ども

はいはいやよちよち歩きなど、自分で動けるようになってくる1歳ごろ。広い草原やキャンプ場は、子どもたちにとってのびのび遊べる場所になります。「このころは、全身を使っていろいろなことに興味をもち、探求する時期。枝や葉っぱをもたせてみたり、水に足をつけてみたり。自然のなかにある多様な刺激に触れさせてあげるといいですね」

2歳:体力も意思も急成長!自然のなかで遊んでみる

植物にさわろうとしている子ども

一人ひとりにはっきりとした意思が芽生えるこの時期は、体力も充実し、歩行も安定してくるタイミング。キャンプ場の散歩コースなどを歩くこともできます。「土の上で思い切りジャンプしたり、川に石を投げたり。都会では『ダメ!』と言ってしまうような遊びでも、自然のなかならどんどんチャレンジできます」

3歳:キャンプ場でお手伝いができるようになる

テーブルを拭いている子ども

子ども同士での遊びが楽しくなるこの時期には、友だち家族とグループキャンプに出かけるのもおすすめです。「大人と同じことをやってみたくなる時期でもあるので、物を運ぶなどのお手伝いを頼んでみるとよいでしょう。そうすることで、子どもたちのなかで達成感が生まれ、人の役に立つ喜びも感じるはずです」

4歳:自然に対しての興味が生まれてくる時期

体力がますます充実し、自然への興味も湧いてくるのがこの時期。「『これなあに?』という質問も多くなりますが、大人だからといって必ずしも名回答をする必要はありません。『不思議だね』と子どもの興味に寄り添うことが大切です」

5歳:キャンプ+αの遊びで子どもの好奇心を伸ばす

この年ごろには、キャンプ+αの楽しみを見つけるのもおすすめです。「虫好きの子ならキャンプ場で虫とりをしたり、料理好きな子なら晩ごはんをいっしょに作ったりしてみては? ますます自然遊びを好きになってくれるはずですよ」

低学年:キャンプを通じて、共同作業の楽しさを知る

おいかけっこしている子どもたち

小学校に入ると、子どもたちもキャンプ場で頼れる存在になります。「他人と力を合わせて作業ができるようになる時期なので、テントを立てたり、焚き火をしたり、いろんなことを手伝ってもらうと自信につながると思います」

中学年:日常から離れるキャンプが家族の大切な思い出に

ハイキングしている子ども

精神的にも体力的にも強くなり、山登りなども楽しめるようになる小学校中学年。「習い事や塾で忙しくなり、自分なりの社会ができてくる時期。だからこそ、家族で過ごすキャンプの時間は、貴重な思い出になります」

高学年:一人前扱いすることで自立心を育む

高学年になれば、キャンプはもちろん山でのテント泊なども可能になります。「お腹が空いたら自分でごはんを用意できるし、服を脱ぎ着して温度調整もできる。一人前として扱ってあげることで、自立心がさらに育まれると思います」

教えてもらいました!

外遊びtete主宰
栗田朋恵さん

登山ガイド。親子の自然体験ワークショップ「外遊びtete」を主催。2021年4月に長野県小谷村に移住し、「白馬の里ユースホステル」を拠点にサマーキャンプなども行なう。

外遊びtete主宰の栗田朋恵さん

年齢や成長の程度によって、子どもの自然との向き合い方は変化していくもの。親子のための自然体験ワークショップを通じてさまざまな年齢の子どもたちとか変わってきた栗田朋恵さんが、一貫して大切にしているのは、子どもの興味や好奇心に寄り添う姿勢です。

「たとえば、子どもが地面に落ちた枯れた花びらを持ってきたとき、親が『汚いから捨てなさい』と言ってしまうと、それまで子どものなかではきれいだった花は、汚いものになってしまう。でも本当は、枯れた花を美しいと思う感性こそが大事だと思うんです。だから、子どもたちが自然のなかで何かを発見したときや、疑問を感じたときには、まず『おもしろいね』と肯定してあげたい。それが子どもの感性を育み、自信を生み出すことにつながると思うから」

また、栗田さんの活動の根底には、ひとつの想いがありました。

「『人はどうやって家族になっていくのか』というのが、私にとって大きなテーマです。家族って、血がつながっているとか、同じ家にいるということだけでは語れない何かで結ばれているもの。同じ体験や感情を共有していくことでよりよくつながっていくんだと思うんです」

もちろん日々の営みにも、親子の共有体験はたくさんあります。けれど、複雑で変化の大きい自然環境に身を置くことは、より強く記憶に残る共有体験につながっていきそうです。「山で食べるおにぎりは、ふだんの何倍もおいしく感じ、寒いキャンプ場で眺めた夜空はずっと記憶に残る。自然体験には親と子のつながりを育む力があると思うんです」

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