キャンプのプロに聞く!快適なテントサイトのレイアウト術〈前編〉基本の考え方
道具とやることにふり回されると、キャンプはおもしろくない
テントサイトのレイアウトの具体的な方法を考える前に、「快適なキャンプ」とはどんな状態かを一度考えてみましょう。たとえば、道具を収納した場所を忘れてテントや車を行き来したり、日暮れ後に焚き火台を車から出して、暗闇のなか四苦八苦しながら火おこしをしたり……。このように道具とやることにふり回される状態では、キャンプが全然楽しめないと小杉さんは教えてくれます。
「食事をしながら会話を楽しんだり、まわりの景色を眺めたり、そういうことを味わいに行くのがキャンプだと思います。『あれどこだっけ?』と生活にふり回されるのではなく、なるべくシンプルにスマートにレイアウトして、ゆったりする時間を長く作れたほうが、キャンプは楽しいと思うんですよね」
普段のキャンプで、1日をゆったりすごすために小杉さんが心がけているのは、持ち込む道具を厳選し、道具の配置はテントやタープの中でなるべく完結させること。車の荷室を収納スペースのひとつと捉えるレイアウト術もありますが、小杉さんはテントと車の関係性は切り離したほうがいいと考えているそう。
「車がとなりにあるとすごく便利だけど、だからといって車に道具の一部を残していると、モノを取るために行ったり来たりすることになる。使うときに車から出すというやり方は、すごく非効率になります。料理や焚き火など、キャンプでやることは限られています。だから車と連動させずに、テントサイト内で道具をすぐ手に取れる状態を作っていくのが一番いいと思います」
つまり小杉さんのレイアウト術においては、フリーサイトでもオートサイトでも、考え方は変わらないということ。
もっとも長く時間をすごす、リビングを快適なレイアウトに
もうひとつ、テントサイトのレイアウトにおいて押さえておくべきことは、一番長くすごすことになるリビングを快適に作っていくこと。小杉さんはさらに、「やっぱり、日中の記憶がキャンプの記憶になるので、寝る場所は基本的にミニマムでいいんです」
快適なリビングを作るためのコツは、テントサイトに着いたらまず、自分たちが座って寛いだときの見え方をイメージすることだそう。サイトの形状や景色の見え方などをチェックしたうえで「ここがリビングを作るのによさそう」とあたりをつけて、「だったら車はここで、寝る場所はここ」という順序で組み立てていきます。
そして大切なのが、なるべく動かずに道具を手に取れる状態にすることと、出入りの動線を確保すること。
中編、後編では、これらのポイントを中心に、ソロ、ペア、ファミリーの場合における小杉さん流のレイアウト術をお届けしていきます。
キャンプのプロに聞く!快適なテントサイトのレイアウト術〈中編〉ソロ・ペアの場合
キャンプのプロに聞く!快適なテントサイトのレイアウト術〈後編〉ファミリーの場合
「レイアウトをどうするか、考えること自体がキャンプの楽しみですよね。道具をそろえて、それをパズルみたいに自分でレイアウトする。いろんなパターンが考えられますが、そのどれを選んでも不自由はしません。キャンプ場やテントサイトに応じて、そのときどきでレイアウトを変えていくことがキャンプ。『こうじゃなきゃいけない』というのは違うと思うし、都度考えるほうがおもしろいのではないかと思います」
プロフィール
小杉 敬/ゼインアーツ代表取締役社長
新潟県出身。新潟県内に本社を構えるアウトドアメーカーに就職し、30年以上キャンプギアのデザインに携わる。2018年に長野県松本市でキャンプギアブランド「ZANE ARTS」を立ち上げ、機能と藝術の融合をコンセプトに、数々の革新的なキャンプギアを生み出し続けている。
文◎松元麻希