自然のなかですごすキャンプは、雨や風、気温の変化などの影響を受けやすいアクティビティ。それだけに、出発前は天気予報が気になる人も多いはず。でも、さまざまな天気予報サイトがあるなかで、どのサイトでどんなポイントをチェックしておくべきなのか、迷ってしまうのも事実です。そこで、北アルプスの山小屋「西穂山荘」の支配人で気象予報士の資格をもつ粟澤徹さんを取材!キャンプに出発する前の天気予報の見方について詳しくうかがいました。

スマートフォンで天気を確認

Q01 キャンプに行く何日前から天気予報をチェックするべき?

一般的な天気予報サイトは、気象庁が発表する数値予報データをもとに気象予測を行なっています。1カ月先や2週間先の天気予報もありますが、キャンプ当日の天気を知るという意味では、じつはそれほどあてにはなりません。ある程度参考になるのがキャンプに行く日の1週間から10日間前の天気予報。さらにしっかりと精度が上がってくるのが3日前からです。そのため、1週間くらい前から天気予報を見始めて、3日前以降に「キャンプに行くか行かないか」を含めて判断するのがよいと思います。

基本的に予報期間が短ければ短いほど、精度は高くなります。そのため、キャンプ当日もしっかり天気予報を見続けることが大切です。そうすれば「今日は夕方から雨が降りそうだから、先に料理をすませておこう」など、天気に合わせて行動を変えることができるからです。

山小屋にも「1週間後の天気が悪そうだから、予約をキャンセルしたい」という連絡を、よくいただきます。そんなときは「せっかく苦労して旅の計画を立てたのに、もったいないなぁ」と感じることもあります。山の天気は変わりやすいですし、夏場なら台風の進路が少しずれただけで天気が好転することも多い。交通機関のキャンセル料などが発生するタイミングも考慮しながら、なるべくギリギリまで待って見極めるのがおすすめですね。

草原に設営されたテント

Q02 「〇〇キャンプ場」など、ピンポイントで場所が指定されている天気予報のほうが信頼できる?

じつはピンポイントの天気予報の範囲は、予報を行なうタイミングによって違います。たとえば10時間先の予報であれば、全国を1辺2kmの正方形のマス目に分けた“2kmメッシュ”の予報データをもとに天気予報を行なうことができるので、比較的詳細で精度の高い予報を出すことが可能。これが、3日先だと“5kmメッシュ”、10日先だと“13kmメッシュ”になります。

1辺13kmの正方形の範囲はとても広く、おなじ範囲内にあっても平地と山地では、天気や気温がまったく違うことがあります。また、どこに範囲の境界があるのかによっても、予報は大きく異なります。Q1とおなじように、予報期間が長いものは参考程度にとどめつつ、直前のピンポイント予報を見て判断するのがよいでしょう。

悪天候のテント場でタープを抑える人

Q03 天気予報を調べるときにチェックするべき項目は?

天気や気温はもちろん、降水量、風速などは必ずチェックしておきたい項目です。とくに強風だと、焚き火が周りに燃え移ってしまったり、風でテントやタープが壊れてしまったりするリスクも。一般的なファミリーテントの場合、風速5mを超えると危険になるケースが多いので、充分に注意してください。

また、1日のあいだで気温や降水量、風速がどのように変化するのかを見ておくことも大切なポイントです。雨が強くなる前にタープを張っておいたり、風が強くなる前に焚き火を消しておいたり……。天候の変化から逆算して、キャンプ場でのすごし方を計画しておくことで、キャンプの充実度が変わってくるはずです。

湖畔沿いのテント場

Q04 森、川、海など、キャンプ場の環境ごとに見ておくべき天気予報ポイントは?

森のキャンプ場の場合、周囲にある木々が雨や風からある程度テントサイトを守ってくれる一方で、強風時に折れた枝が落ちてきてケガをするケースもあります。そのため、風速はきちんと見ておきたいですね。また、大きな木は落雷の確率が高いので、雷注意報などが出ているときは、大きな木の下を避けるようにしましょう。

川の近くのキャンプ場の場合はやはり水害に気をつけたいので、降水量はしっかりチェックしておきましょう。ただ、ひと言で水害といっても、大きな川の下流域の場合は数日前に降った雨の影響を大きく受けることがありますし、反対に上流域は短時間で一気に水量が増えることも。行く場所によって、どのタイミングで雨が降ったのかを知っておくことも必要だと思います。

海のキャンプ場の場合は、熱中症のリスクを考えて、気温や天候に注意が必要。直射日光を避けられる木陰などがあるかどうかも大切なポイントです。また、周囲に障害物のない海辺は、風の影響を受けやく、昼と夜で風向きが反転する“海陸風”という現象もあるので、1日のなかで風速や風向きがどう変化するのかを気にしておきたいですね。ビーチにテントを張るなら、気象庁のホームページなどで、満潮時刻や干潮時刻を調べておくこともおすすめします。

山にあるキャンプ場は、地形によって環境が異なります。たとえば、周囲に木々が多ければ森のキャンプ場と同様に風速や雷を気にしておきたいですし、近くに沢があれば降水量も重要になります。ただ一般的に標高が100m上がると気温は0.6℃下がりますし、風速1mにつき体感温度が1℃下がります。標高の高いキャンプ場に泊まるときほど、朝晩の気温や風の強さにも気を配りたいですね。山の天気は変わりやすいですが、基本的に天気は西から東へと変わっていくので、その点も覚えておきたいポイントですね。

雨雲レーダー

Q05 キャンプ前の天気予報チェックにおすすめのサイトは?

日本にはさまざまな気象情報提供企業があり、それぞれに情報の伝え方や予報の傾向が異なります。いろいろ試してみて「このメディアは信頼できる」と思えるものを見つけるのがよいと思います。ちなみに、個人的に参考になると感じているのは、「Yahoo!天気」などに気象情報を提供するウェザーマップ社の天気予報です。

また、チェコの企業が提供する「Windy」もおもしろいですね。「Windy」は非常に多機能なので、慣れないうちは使いにくいと感じるかもしれません。ただ、このサービスでは、世界一予報精度が高いといわれるヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)の情報やアメリカ海洋大気庁が公開する気象データ(GFS)などを比較することができます。自分が知りたいポイントについての各データの予報が一致していれば、おそらく確度は高いですし、予報がバラバラだったら怪しいかもしれない……。そんなふうに使ってみるのがおすすめですね。無料版でも5日先の天気予報を見ることができるので、ぜひ一度試してみてください。

大きな木とキャンピングカー

天気とうまく付き合えるかは、キャンプの楽しさを大きく左右する要素。それだけに、出発前には上手に天気予報を活用したいもの。1週間ほど前から天気予報を見始めて、予報精度の高まる3日前からはさらにしっかりと天気を確認すること。キャンプ場の環境や地形によって想定されるリスクを考慮しながら、当日まで天気予報をチェックし、キャンプ場にいるときにも常に天気の変化を気にしながら最適な行動を考えること。そんな習慣を身につけることが、キャンプ上級者への第一歩かもしれません!

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